読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

ヘイトの先ー読書感想「R帝国」(中村文則)

「朝、目が覚めると戦争が始まっていた」。中村文則さんの最新作「R帝国」の書き出しは、たった一言で物語に引き込む。そこからはもう、目が離せない。このディストピア小説の恐ろしさは、いま、社会の憎悪(ヘイト)を増幅した先に、こんな絶望的な世界が起…

レジリエンスを学ぶー読書感想「OPTION B」(S・サンドバーグ)

苦しみからもう一度生き直す力「レジリエンス」を、これ一冊で深く深く学べる。「OPTION B 逆境、レジリエンス、そして喜び」は、著者でフェイスブックCOOでもあるシェリル・サンドバーグさんが、突然直面した最愛の夫の死にどう向き合ったかを記した苦闘の…

人生は私のものー読書感想「最低。」(紗倉まな)

「エロ屋」を看板にする女優紗倉まなさんのデビュー小説「最低。」は、胸をえぐるヒューマンストーリーだった。AVが何らかの形で人生に関わる「彩乃」「桃子」「美穂」「あやこ」4人を軸にした、連作短編集。好奇の眼差しや、偏見、後ろ指があふれるAV制作…

大動脈ー読書感想「社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた」(S・ヴェンカテッシュ)

「社会学者がニューヨークの地下経済に潜入してみた」のタイトル通り、コロンビア大学の社会学教授スディール・ヴェンカテッシュ氏が、大都市ニューヨークの「裏側」に飛び込んだノンフィクションである。ヴェンカテッシュ氏はシカゴでも同様に、10年間に…

人類起源探求SFー読書感想「Ank:」(佐藤究)

近未来を描きつつ、「人類はどこから来たのか」という「未知の過去」に果敢に挑んだSF小説が、佐藤究さんの「Ank: a mirroring ape」だった。突如として人間が狂い、隣人と殺し合いを始めた《京都暴動(キョート・ライオット)》。その原因はウイルスでも…

ゆったりゲリラ―読書感想「ナリワイをつくる」(伊藤洋志)

超競争社会を生きるための、ゆったりしたゲリラ戦略の参考書が伊藤洋志さんの「ナリワイをつくる 人生を盗まれない働き方」だ。グルーバル市場で勝ち抜ける自信も、AI時代に淘汰されない確信もないという「非バトルタイプ」にこそ読んでほしい。「頑張ろう…

生きていける―読書感想「未必のマクベス」(早瀬耕)

今週のお題「読書の秋」 この物語を読んだことは、いつかきっと大切な思い出になる。早瀬耕さんの小説「未必のマクベス」はそう断言できるくらいの、極上の読書体験を届けてくれる。恋愛小説であり、犯罪小説であり。立ちこめる霧のように優しく幻想的な世界…

死はなぜつらいのか?ー読書感想「死すべき定め」(A・ガワンデ)

死は、なぜつらいのか?そんな根本的な問いに向き合うきっかけをくれるノンフィクションが「死すべき定め 死にゆく人に何ができるか」だ。著者のアトゥール・ガワンデさんは米ブリンガムアンドウィメンズ病院の医師であり、ライターでもある。死は命の喪失で…

2017年新刊の小説・ノンフィクションから全力で10冊推す

今週のお題「読書の秋」 2017年もたくさんの素敵な本が登場しました。「読書メーター」で記録を始めた3月21日以降、読了した数は72冊(9月下旬時点)。このうち今年発売されたノンフィクション、小説、エッセイの中から、全力でオススメしたい10…

孤独の先の孤独ー読書感想「声をかける」(高石宏輔)

いったいこの胸の孤独は、いつ埋まるんだろう。本書「声をかける」を読み終えて、そんな切なさがこみ上げた。ある男性が、東京でひたすらナンパをしていくという話。著者は高石宏輔さんという方で、帯裏の紹介には、1980年生まれで慶応大学中退、いくつ…

機械親和性人間へー読書感想「超AI時代の生存戦略」(落合陽一)

次の時代へ、考え方や生き方を「アップデート」する方法を学ぶことが、本書「超AI時代の生存戦略 シンギュラリティに備える34のリスト」のテーマになる。著者は「現代の魔法使い」とも称されるメディアアーティストであり研究者、落合陽一さん。自身がプロ…

【本棚から】真夜中に読む5冊

真夜中は読書に格好の時間だ。早く結末を知りたい、とミステリーを一気読み。ひきこまれた恋愛小説を読了するころには、もう3時。秋の夜長。作中の夜に味わいがある、真夜中の空気感にぴったりだ、本棚からそんな5冊を紹介したい。 すべて真夜中の恋人たち…