読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

永遠の山登りを楽しむー読書感想「仕事人生のリセットボタン」(為末大/中原淳)

ランナーでありツイッターなどで発信される言葉もユニークな為末大さんと、「学び」や人材開発の専門知識を洒脱に伝えてくれる研究者・中原淳さんが、「右肩上がりのエスカレーターのないこの時代にどう働き、どう生きるか」を考える一冊。本書「仕事人生の…

最後にバッタ愛が勝つー読書感想「バッタを倒しにアフリカへ」(前野ウルド浩太郎)

「バッタに食べられたい」というクレイジーな夢を持つ昆虫学者、前野ウルド浩太郎さんが、バッタへの深すぎる愛であらゆる困難を超えていくノンフィクションが本書「バッタを倒しにアフリカへ」だ。困難とは、まじで現実的で胃が痛くなるものばかりだ。ポス…

藤原竜也の悪役力ー読書感想「22年目の告白」(浜口倫太郎)

同名映画のノベライズ(小説版)である「22年目の告白ー私が殺人犯ですー」は、社会は加害者をどう扱うべきかと、翻って被害者支援のあり方を考える良書だった。作者は放送作家としても活躍する浜口倫太郎さん。小説を実写化するとキャラクターと役者のギャ…

リスナーに灯火をー読書感想「明るい夜に出かけて」(佐藤多佳子)

深夜ラジオを主軸に、真夜中を舞台に、かさぶたを撫でながら生きる若者を主人公にした、傑作の青春小説だった。佐藤多佳子さんの「明るい夜に出かけて」は、ラジオの生の言葉の感じを巧みに文体に織り込んで、ラジオが救いになる世界を立ち上げる。特にオー…

突破力×α個=多動力ー読書感想「多動力」(堀江貴文)

堀江貴文さんが本書「多動力」で提示する多動力は実に明快だ。それは「サルのように」熱中し、突き抜けたパワー・事業を、同時にα(複数)個進行させて「掛け合わせる」ということ。多動は足し算ではなく掛け算なんだというのがポイントだろう。そして多動の…

読むエスプレッソー読書感想「ザーッと降って、からりと晴れて」(秦建日子)

サラッと読めて、でもぐっと癒される本がある。そういうページ数の少ない、厚みの薄めの本が好きだ。「アンフェア」の生みの親で知られる秦建日子さんの連作短編集「ザーッと降って、からりと晴れて」(河出文庫)は、まさにそういう、エスプレッソやぐーっ…

あれ、幸せってなんだっけー読書感想「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」

バラエティ番組やCMで活躍の上、「オールナイトニッポン」MCとして深夜の無数の寂しい魂を沈めてくれている、超人気お笑いコンビ・オードリー。そのツッコミ担当・若林正恭さんが綴ったエッセイ「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」は、短い夏休み…

たくさん逃げようー読書感想「『死ぬくらいなら会社辞めれば』ができない理由」

著者のイラストレーター・汐待コナさんの漫画にネットで出会い、救われた。働いて働いて辛くて、そんな自分の状況を視覚化してくれて、「世界は、本当は広いんです」と背中を押してくれた。本作「『死ぬくらいなら会社辞めれば』ができない理由」は、話題に…

あの頃の気持ちに会いに行こうー読書感想「ボクたちはみんな大人になれなかった」(燃え殻)

わずか150ページあまりに、青春が凝縮されている。燃え殻さんのウェブ連載を書籍化した小説「ボクたちはみんな大人になれなかった」を読んで、浮かんできたフレーズは、ザ・ハイロウズのあの名曲の一節だった。「時間が本当にもう本当に止まればいいのにな」…

逃れられない罪ー読書感想「イノセント・デイズ」(早見和真)

主文、死刑。罪状、元彼氏への未練、自分を置いて幸せになる恨みから居宅へ放火し、中にいた妻と1歳の双子の命を奪った。本書「イノセント・デイズ」は、凶悪としか言いようがない事件を起こしたとされる、ある女性死刑囚の物語だ。刑事コロンボよろしく、冒…

放射線と戦えるのか?ー読書感想「『心の除染』という虚構 除染先進都市はなぜ除染をやめたのか」

福島第1原発事故後、速やかな除染対策を打ち「除染先進都市」と評価された福島県伊達市を舞台に、「放射線被害とどう向き合うか」を問い掛けるノンフィクション。著者のジャーナリスト黒川祥子さんは伊達市がふるさと。事故後も生活を、子どもを守るお母さん…

ドラえもんと「有用性」―書評「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」

人工知能(AI)が普及した未来では、雇用・労働はなくなる。その未来は、13年後の2030年から、もう始まっていく。本書「人工知能と経済の未来」で、著者井上智洋さんはそんな衝撃的な予想を打ち出していく。そして、そんな社会でどう生きるのか。人…