読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

小説-ミステリー・クライム

ど真ん中ナックルボールー読書感想「屍人荘の殺人」(今村昌弘)

最大の難関は、いかにネタバレに触れずに読み始めるか。あとはただ、謎とサスペンスの世界にひたすら没入させてくれるのが、今村昌弘さんの小説「屍人荘の殺人」だ。ミステリーの王道中の王道、密室殺人を扱う。だけど、ネタバレになるから絶対に言えないあ…

現役記者の緊迫犯罪小説ー読書感想「スリーパー 浸透工作員」(竹内明)

思わず一気読みしてしまった。それほど引き込まれる北朝鮮クライムノベル「スリーパー 浸透工作員 警視庁公安部外事二課ーソトニー」の書き手は、TBSの現役記者・竹内明さんだ。おそらく取材現場で垣間見たであろう、公安捜査の内幕がふんだんに取り込まれて…

大泉洋さんが動くー読書感想「騙し絵の牙」(塩田武士)

活字の上を、大泉洋さんが動いてる!!グリコ・森永事件を題材にした「罪の声」でブレークした塩田武士さんの最新作「騙し絵の牙」は、役者・大泉洋さんを「あてがき」(役をあらかじめ決めて作品を書くこと)した小説だ。塩田さんはきっと大泉さんが大好き…

生きていける―読書感想「未必のマクベス」(早瀬耕)

今週のお題「読書の秋」 この物語を読んだことは、いつかきっと大切な思い出になる。早瀬耕さんの小説「未必のマクベス」はそう断言できるくらいの、極上の読書体験を届けてくれる。恋愛小説であり、犯罪小説であり。立ちこめる霧のように優しく幻想的な世界…

超高速だまし小説―読書感想「ルビンの壺が割れた」(宿野かほる)

「絶対だまされない」と警戒する読者の上を行く。 そんな「だまし力」を持った小説が宿野かほるさんの「ルビンの壺が割れた」だ。ポップや帯の惹起は「あなたは絶対にだまされる」「結末のあと、もう一度読み直す」。最高レベルの警戒をもってしても、上手を…

まさに今ー読書感想「米朝開戦」(M・グリーニー)

まさに「米朝開戦」の恐れもある今、読みたいと手に取った一冊。 軍事スパイ小説の名手、故トム・クランシー氏のシリーズを後継したマーク・グリーニー氏による小説。「開戦」というタイトルだけれど、今回も水面下で展開するインテリジェンス(諜報)バトル…

会話だけの小説―読書感想「燃焼のための習作」(堀江敏幸)

不思議な読書体験を与えてくれる小説が堀江敏幸さんの「燃焼のための習作」だ。本作には、展開も、伏線も、激動もない。約250ページ、あるのは淡々とした会話だけだ。それのなんと味わい深いこと。本作は話すことそれ自体の楽しみ、深みを教えてくれる。…

どう見えるかの時代ー読書感想「晩夏の墜落」(ノア・ホーリー)

いつから事実よりも「事実らしく見えるか」が大事になってしまったんだ?ー本作「晩夏の墜落」は、「メディア王が乗ったプライベートジェットの墜落と、唯一の生存者」というスリリングなストーリー展開の中に、この骨太のテーマが芯として通っている。だか…

藤原竜也の悪役力ー読書感想「22年目の告白」(浜口倫太郎)

同名映画のノベライズ(小説版)である「22年目の告白ー私が殺人犯ですー」は、社会は加害者をどう扱うべきかと、翻って被害者支援のあり方を考える良書だった。作者は放送作家としても活躍する浜口倫太郎さん。小説を実写化するとキャラクターと役者のギャ…

逃れられない罪ー読書感想「イノセント・デイズ」(早見和真)

主文、死刑。罪状、元彼氏への未練、自分を置いて幸せになる恨みから居宅へ放火し、中にいた妻と1歳の双子の命を奪った。本書「イノセント・デイズ」は、凶悪としか言いようがない事件を起こしたとされる、ある女性死刑囚の物語だ。刑事コロンボよろしく、冒…

社会の成分は女性への不自由、男性へのいたわりー書評「BUTTER」

独身男性3人から財を搾り取り、殺害したとして逮捕されたのは、たっぷりと肉がついた身体を揺らす、美しさの尺度からかけ離れた女だった。食べたいものを食べる、太っても気にしない、男に尽くし、貢がせるー。欲望には忠実に、一方で旧来的な「女らしさ」を…

狂っていく最中に狂っているとは気付けない―「成功者K」

芥川賞を獲得した男性小説家Kは一夜にして「成功者」となった―。本書「成功者K」のあらすじだけを見ると、著者羽田圭介さんの私小説に思えて仕方がない。これが作品の最大のスパイスになっている。Kは成功を機に、ファンの女の子をとっかえひっかえにして…

読後こそ楽しいサスペンス―「出版禁止」(長江俊和)

日本中のラジオがいつでも聴けるアプリ「radiko(ラジコ)」で知ったDJに、浅井博章さんがいる。大阪のFM802で毎週日曜日、「モーニングストーリー」と銘打ち、おすすめの本や映画を紹介。読書家の浅井さんがストーリーテラーになる作品はどれ…

アートミステリーという二重らせん―「神の値段」

神の値段 (宝島社文庫) 作者: 一色さゆり 出版社/メーカー: 宝島社 発売日: 2017/01/11 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 旅先、出張先で手持ちの本を読み終わってしまうことは、本読みあるあるだと思う。ただ宿泊地や中継駅に必ずしも本屋がない…