読書録K

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「戦前」を線でとらえる―「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」

 

 なぜ日本は太平洋戦争に突き進んだのか。その道筋を日清戦争日露戦争からたどっていく本書は、「無謀な陸軍と政府が戦争を引き起こした」と一言で語られがちな「戦前」を、線としてとらえるヒントをくれる。

 

 たとえば日清・日露戦争のころから、日本が得ようとした植民地は「安全保障上の理由」だったとの指摘。この視点があると、第一次世界大戦の際に欧州で繰り広げられた総力戦の衝撃を胸に、来るべき対ロ戦争を見据えて、満州などの獲得に乗り出した背景が見える。

 

 議論の基盤として、ルソーの「戦争とは相手国の憲法を書き換えるもの」「多大なる犠牲を払った戦争後には、新たな社会契約が求められる」という思想が序章で示される。日本はまさに敗戦で新憲法が制定された。しかしこのところ安全保障法制の見直しや、国民的関心を見ると、戦後の新たな社会契約は、日本の中で完成していないのかもしれないと思わされる。だとすれば、我々はどんな契約の中身を望むのか。

 

 また、相手の憲法を書き換えるものが戦争だとすれば、対テロ組織が引き起こす非対称戦争は、何なのだろう。その枠組みでとらえられるのか、また違った考察が必要なのか。