読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

女性を1日100語しか喋らせない絶望社会ー読書感想「声の物語」(クリスティーナ・ダルチャーさん)

女性だけが特殊な腕輪を装着させられ、1日100語以上を喋ると強烈な電流を浴びせられる。女性の声を奪ったディストピア社会を描くのが、クリスティーナ・ダルチャーさんのSF小説「声の物語」だ。 一部の女性が出産のための道具として使われるというSF小説「侍…

ジョブズのリンゴは平均時代を終わらせるー読書感想「純粋機械化経済」(井上智洋さん)

経済学者・井上智洋さんの「純粋機械化経済 頭脳資本主義と日本の没落」は、「サピエンス全史」並みの話題書になるはずだ。そのぐらいのインパクトがある。本書は、AIによる時代変化を、テクノロジー論、経済論、未来予測だけでなく「人類史」のスコープで超…

分断されないために読む本ー読書感想「アイデンティティが人を殺す」(アミン・マアルーフさん)

ヘイトが溢れている今だからこそ、本書「アイデンティティが人を殺す」を読む意味がある。分断されないために、憎しみ合わないために、この本のアイデンティティ論を学びたい。 著者はレバノンで生まれ、内戦を機にフランスへ移住した作家アミン・マアルーフ…

強いとはあなたがあなたでいることー読書感想「メンタルが強い人がやめた13の習慣」(エイミー・モーリンさん)

メンタルが強いとはどういうことだろうか?サイコセラピストでライターのエイミー・モーリンさんは「どんな運命が降りかかろうとも、自分の価値観に従って生きること」と定義する。そして、その強さのためには何かを「する」よりも「やめる」ことが重要だと…

セラピーだけでなくケアもー「居るのはつらいよ」(東畑開人さん)

何かをしてばかりいる。どこかを目指して、何かを目指してばかりいる。自分の生活には「する」がギュウギュウになって、ただ「居る」ことなんてほとんどないな。「居るのはつらいよ ケアとセラピーの覚書」は「居る」を取り出して、よくよく見つめて、その奥…

乗り物である私たちー読書感想「利己的な遺伝子」(リチャード・ドーキンスさん)

生物とは利己的な遺伝子が生き延びるために使う乗り物である。生物学者リチャード・ドーキンスさんの「利己的な遺伝子」の言説はこのワンセンテンスに集約される。この刺激的なメッセージを、400ページ余り使って大きく展開する。1976年の初版なのに、今読ん…

なぜそこでは自殺が少ないのかー読書感想「その島のひとたちは、ひとの話をきかない」(森川すいめいさん)

自殺件数が相対的に少ない「自殺希少地域」というものがある。そこではなぜ自殺が少ないのだろうか? 精神科医森川すいめいさんが、実際に現地を旅して感じた学びをアカデミックな知識と結びつけながら綴ってくれた本が「その島のひとたちは、ひとの話をきか…

残業は解剖できるー「残業学」(中原淳さん+パーソル総合研究所)

「残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?」は、残業のメカニズムを明らかにする本だ。残業は個人の能力の問題でもないし、止むを得ず発生する現象でもない。残業は解剖できる。原因を構造化できる。その上で、効果的に対策を打っていくことは可…

移民の否認は人間の否認ー読書感想「ふたつの日本」(望月優大さん)

日本政府は、日本に移民がいることを否定する。データを丁寧に紐解けば日本が移民国家であるのは明らかなのに、頑なに否認する。望月優大さんの「ふたつの日本 『移民国家』の建前と現実」は、そんな態度に真っ向から相対する。移民を否認することは、人間を…

女性が電撃を放てるようになった世界ー読書感想「パワー」(ナオミ・オルダーマンさん)

ある日、女性が手のひらから電撃を放てるようになった。まるでデンキウナギのように。本気を出せば、男性の命さえも奪えるようになった。裸一貫で、手ぶらで。じわじわと、男性優位の世界は転回を始める。ナオミ・オルダーマンさんの「パワー」は痛快な男女…