読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

女性が電撃を放てるようになった世界ー読書感想「パワー」(ナオミ・オルダーマンさん)

ある日、女性が手のひらから電撃を放てるようになった。まるでデンキウナギのように。本気を出せば、男性の命さえも奪えるようになった。裸一貫で、手ぶらで。じわじわと、男性優位の世界は転回を始める。ナオミ・オルダーマンさんの「パワー」は痛快な男女…

新しい本能をつくるー読書感想「生き残る判断 生き残れない行動」(アマンダ・リプリーさん)

人間は「新しい本能」をつくることができる。本書「生き残る判断 生き残れない行動 災害・テロ・事故、極限状況下で心と体に何が起こるのか」が示してくれる希望はそこにある。人間の認知・身体的な本能は、現代の災害下では時に不利になる。だけど、知性的…

幸福とは「何を見るか」ー読書感想「幸せな選択、不幸な選択」(ポール・ドーランさん)

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの教授ポール・ドーランさん(行動科学)の知見を総動員し、「人はどうしたら幸せになれるのか」を探求した本が「幸せな選択、不幸な選択 行動科学で最高の人生をデザインする」だ。その要諦は「何を見るか」。ドーラ…

善良であることー読書感想「続 横道世之介」(吉田修一さん)

この物語は善良であることがどれほど尊いかを教えてくれる。有能ではなく、優秀でもない。替えがきかないとか、生産性が高いとか、そんなこととも関係ない。善良であること。悪意から距離を置き、善意に溺れることなく、ただただ善良であること。吉田修一さ…

私が私を裁かなくちゃいけないー読書感想「死にがいを求めて生きているの」(朝井リョウさん)

誰も私の価値を決めたりはしない。あるともないとも言わない。だからこそ、私は私を裁かなくちゃいけない。それで、自分を肯定できるのならいい。でもそうじゃない。だからこんなにも、苦しい。朝井リョウさんの長編小説「死にがいを求めて生きているの」は…

意味ベースでいこうー読書感想「目の見えない人は世界をどう見ているのか」(伊藤亜紗さん)

目が見えないということは欠落ではない。見える人にとっての世界と、見えない人にとっての世界は違う。そこに優劣はない。あるのは「意味」の異なり。見える/見えないをビットのあるなしのように「情報」ベースで捉える考え方から、「意味」 ベースに考え方…

辺境中の辺境に萌芽があるー読書感想「20億人の未来銀行」(合田真さん)

この人は未来を変えるかもしれない。「20億人の未来銀行 ニッポンの起業家、電気のないアフリカの村で「電子マネー経済圏」を作る」を読んでワクワクした。著者の合田真さんを知れて、その頭の中を覗けて、興奮が収まらない。 合田さんが構想するのは「金利…

分からないのは豊かなことー読書感想「考えるとはどういうことか」(梶谷真司さん)

「分からない」のは恥ずかしいことじゃない、むしろ豊かなことだ。「問い」を多く持ち、さらに問い続けることこそ、人を自由にする。哲学者・梶谷真司さんは「考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門」で、こう伝えてくれている。 本書の…

アフター2020をどう生きるー読書感想「東京の子」(藤井太洋さん)

小説「東京の子」はアフター2020をどう生きるか、を読者に問い掛ける。五輪は終わった。どうにも使いきれないレガシーが残った。すっかり東京は「国際都市」へ変貌した。足元の雇用は溶け出していく中で、理想なのかどうか判別できないビジョンが立ち上がっ…

短くて痛くて美しい物語ー読書感想「ビューティフル・デイ」(ジョナサン・エイムズさん)

ほんの100ページなのに濃厚な読書体験ができる。ノワール、いやバイオレンスに近い痛々しい世界なのに、綴られる言葉はほのかに詩的で、どこまでも美しい。作家でありテレビ脚本家でもあるジョナサン・エイムズさんの短編「ビューティフル・デイ」は不思議で…