読書熊録

本に出会う歓びを、誰かと共有したい書評ブログ

ノンフィクション

ハピネスを可視化するー読書感想「データの見えざる手」(矢野和男)

ハピネスは可視化できる。「感じるもの=定性」から「測れるもの=定量」に置き換えられる。野心的なメッセージをファクトをもって伝えるのが、矢野和男さんの「データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則」だ。 矢野さんは日立…

散歩は楽しまなきゃー読書感想「さよなら未来」(若林恵)

行き先もルートもそこで出会う何かも、全てを予想できる散歩を散歩とは言わない。散歩は楽しまなきゃ。「さよなら未来 エディターズ・クロニクル2010-2017」で語られていることは、そういうことだと思う。 「WIRED」日本版前編集長だった若林恵さんが、WIRED…

本と本屋を愛する人へー読書感想「これからの本屋読本」(内沼晋太郎)

「これからの本屋読本」は、本と本屋を愛する人へ向けられた本だ。本に関する様々な企画を主宰する「NUMABOOKS」代表で、ビールが飲める書店「本屋B&B」を運営している内沼晋太郎さんの著作。 出版不況、活字離れと言われ久しい。それでも、なぜ我々は本を…

ベゾス帝国を読み解くー読書感想「アマゾンが描く2022年の世界」(田中道昭)

拡大を続けるAmazon(アマゾン)がこれからどんなビジネスを展開するのか。その根幹にある戦略と、リーダーのジェフ・ベゾス氏の思想を読み解くのが、本書「アマゾンが描く2022年の世界 すべての業界を震撼させる『ベゾスの大戦略』」だ。 極上の顧客体験「…

何度でもその日に備えるー読書感想「働く大人のための「学び」の教科書」(中原淳)

大人になったら誰も、「勉強の仕方」を教えてはくれない。だから私たちは、本書「働く大人のための『学び』の教科書」を開くのだ。 人材開発、リーダーシップ開発をアカデミックの目線で研究してきた中原淳さん(出版時:東京大学・大学総合教育研究センター…

起業家けんすうさんが質問箱でオススメされた本24冊+αを意地でまとめてみた

起業家のけんすうさん(Twitter: @kensuu)の3万超のツイートをひたすら遡り、匿名Q&Aサービス「質問箱(peing.net)」、同種サービス「Sarahah」でオススメされた本をまとめたのがこのエントリーです。ついでに、普段のツイートで紹介された本もプラスアル…

我々はまだ明日であるー読書感想「昨日までの世界」(ジャレド・ダイアモンド)

伝統社会は、実はほんの「昨日」でしかない。人類生態学者ジャレド・ダイアモンドさんの「昨日までの世界 文明の源流と人類の未来」は、人類の過去と現在をつなぐ回路を読者に開いてくれる。21世紀の我々が、狩猟社会や農耕社会に学ぶことはあるだろうか?…

システム1は止められないー読書感想「ファスト&スロー」(ダニエル・カーネマン)

人間には2つのシステムがある。それがノーベル賞を受賞した経済学者、ダニエル・カーネマンさんが「ファスト&スロー」で伝えてくれる、一番シンプルで、一番ドラスティックな教訓だ。「システム1」は働き者で、ファストな判断をしてくれるものの、様々な…

学ぶと楽しく生きられるー読書感想「『行動経済学』人生相談室」(ダン・アリエリー)

勉強が苦手だというひとには、この「『行動経済学』人生相談室」をおすすめしてみてほしい。深夜ラジオのように、学者さんのダン・アリエリーさんが様々なお悩みに答えてくれる。彼の専門、行動経済学は、恋から資産運用、引っ越しもお昼のビュッフェも、ち…

停滞から循環にー読書感想「AIとBIはいかに人間を変えるのか」(波頭亮)

人工知能(AI)とベーシックインカム(BI)が組み合わさったとき、停滞した社会は再び循環を始める。戦略コンサルタント波頭亮さんの「AIとBIはいかに人間を変えるのか」は、そんな可能性を示す。AIは知的パワーを代替し、人間はギリシア時代のように「真・善…

トランプ氏はピッコロかもしれないー読書感想「炎と怒り」(マイケル・ウォルフ)

もっとも衝撃的だったのは、まだ彼が「第1章」かもしれないということだ。本人から出版差し止めも示唆され、ベストセラーとなった「炎と怒り トランプ政権の内幕」。トランプ氏とはどんな人物か、だけではなく、一体誰が彼を支え、あるいは利用しようとして…

撤退の時代にできることー読書感想「コミュニティ」(ジグムント・バウマン)

「関与」の時代だった近代は終わりを告げ、「撤退」の時代を迎えている。その渦中で、果たしてコミュニティは維持できるのだろうか。あるいは理想的なコミュニティを構築できるだろうか。2017年に亡くなった社会学者ジグムント・バウマンさんが「コミュ…

科学報道と社会ー読書感想「10万個の子宮」(村中璃子)

医師でありジャーナリストの村中璃子さんが出版したノンフィクション「10万個の子宮 あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか」は、科学報道(サイエンス・ジャーナリズム)と社会の関係性を考えさせられる。村中さんは副反応を訴える少女た…

暮らしにバラをー読書感想「僕らの社会主義」(國分功一郎・山崎亮)

食卓にバラを飾るように、暮らしに楽しさを自給しよう。國分功一郎さん、山崎亮さんの対談本「僕らの社会主義」はそう提案する。2人が語り合うのは、社会主義を「料理のスパイスのように」使う方法だ。いろんな思想家が登場するけれど難しくない。彼らの思…

悩むより考えるー読書感想「イシューからはじめよ」(安宅和人)

問題を前に悩むより、それが本当に「問題か」を考えよう。ヤフー・チーフストラテジーオフィサーの安宅和人(あたか・かずと)さんの「イシューからはじめよ 知的生産の『シンプルな本質』」は、「問題解決」以前の「問題設定」の重要性を説く。そのイシュー…

せいこうさんだからこそー読書感想「「国境なき医師団」を見に行く」(いとうせいこう)

ジャーナリストではなく、作家だからこそ、いとうせいこうさんだからこそ、こんなにも伝わる「何か」がある。「『国境なき医師団』を見に行く」は、いとうせいこうさんがハイチ、ギリシャ、マニラ、ウガンダにある国境なき医師団の活動現場を訪問し、見たも…

国難を国恵にー読書感想「日本再興戦略」(落合陽一)

国難を、国の恵みにすることは可能である。 落合陽一さんの最新著作「日本再興戦略」は、そう高らかに歌い上げる。少子高齢化を「チャンス」と捉える。テクノロジーを学び、「機械と人間の融合」の可能性を受け止める。そして「ポジションを取り」、逐次的に…

なぜストレスが溜まるのか?ー読書感想「STOP STRESS」(マリーネ・フリース・アナスンら)

なぜストレスは溜まるのか? どうすればストレスをコントロールしながら働けるのか? その疑問に理論的な回答をくれたのが、「STOP STRESS 北欧の最新研究によるストレスがなくなる働き方」だった。長年、デンマークなどでストレスを研究してきたマリーネ・…

スキマの力ー読書感想「うしろめたさの人類学」(松村圭一郎)

息苦しいなら、スキマをつくればいい。文化人類学者・松村圭一郎さんの「うしろめたさの人類学」は、日本の社会に閉塞感を感じる人に、言われてみればシンプルなアイデアを投げかけてくれる。絡まった糸を解きほぐすきっかけに、松村さんが専門のエチオピア…

本に迷った時に頼れる「本の雑誌」

最近、「本の雑誌」さんを手に取り始めた。もうすぐバックナンバーになってしまうかもしれないが、2018年1月特大号(No.415)「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」は、紹介された本を実際に読んでみると傑作ばかり。増刊号の「おすすめ文庫王国2…

新封建制・雇用破壊・無責任ー読書感想「インターネットは自由を奪う」(アンドリュー・キーン)

これだけ便利なインターネットを礼賛することこそ簡単だが、反対に批判することは難しい。アンドリュー・キーンさんは、それを徹底的にやってのける。著書「インターネットは自由を奪う 〈無料〉という落とし穴」は、現在のネット経済を牽引するグーグルやフ…

手触りのある思考ー読書感想「あるノルウェーの大工の日記」(オーレ・トシュテンセン)

手を動かしながら考えるとは、どういうことか。「あるノルウェーの大工の日記」はタイトル通り、北欧のノルウェーで大工の親方をしているオーレ・トシュテンセンさんが日々の仕事や、そこで巡らせた思考を記録している。その思考が面白い。土埃がついて、傷…

AIは人の顔をするー読書感想「人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?」(山本一成)

人工知能(AI)ってこんなに面白いんだ! プロ棋士に初めて勝利した将棋プログラム「ポナンザ」の作者である山本一成さんの著書「人工知能はどのようにして『名人』を超えたのか? 最強の将棋AIポナンザの開発者が教える機械学習・深層学習・強化学習の本…

良好な体調維持に直結した3冊

今週のお題「体調管理」 2017年、この3冊のおかげで良好な体調を維持できた、といっても過言ではない実用書を紹介したいと思います。観点は筋トレ・睡眠・食事の3つ。それぞれ何を意識すれば、どう気をつければいいのか、3冊は具体的に教えてくれます…

最良の上司のような本ー読書感想「ポスト平成のキャリア戦略」(塩野誠・佐々木紀彦)

良い意味で、もやもやする。「ポスト平成のキャリア戦略」は、このままの働き方でいいのかと悩むビジネスマンを揺さぶり、前進させてくれる。経営共創基盤(IGPI)取締役・塩野誠さんと、NewsPicks編集長・佐々木紀彦さんの対談。二人は読者を「煽り」まくる…

トライブを生きるー読書感想「ミレニアル起業家の新モノづくり論」(仲暁子)

1982年以降に生まれ、00年代で大人になった世代は「ミレニアル世代」と言われ、世界中に約20億人いるとされる。そのミレニアル世代の一人であり、ウォンテッドリー株式会社の最高経営責任者(CEO)、仲暁子さんが「ミレニアル世代を読み解く鍵」…

郷に入っては郷で闘うー読書感想「ソマリランドからアメリカを超える」(ジョナサン・スター)

郷に入っては郷に従わない、闘う。「ソマリランドからアメリカを超える 辺境の学校で爆発する才能」は、ソマリランドという圧倒的にユニークな郷で、アメリカ人起業家のジョナサン・スターさんが強烈なビジョンを持って奮闘する様を描く。その目標は、ハーバ…

ナッジ・トゥ・ザ・ピープルー読書感想「シンプルな政府」(キャス・サンスティーン)

大きな政府か、小さな政府か、ではなく、シンプルな政府へ! オバマ政権で国家の規制を担当する「情報・規制問題室長」だった法学者キャス・サンスティーンさんの「シンプルな政府 ”規制”をいかにデザインするか」は、ポップで刺激的な「第三の道」を示す。…

降りたっていいー読書感想「START UP アイデアから利益を生み出す組織マネジメント」(ダイアナ・キャンダー)

大切なのは、ゲームに参加し続けること。そのためには時に、ゲームを降りたっていいーー。起業家兼コンサルタントのダイアナ・キャンダーさんによる「START UP(スタートアップ) アイデアから利益を生み出す組織マネジメント」のメッセージだ。日本では「ベ…

一人で始める働き方改革ー読書感想「「自分」の生産性をあげる働き方」(沢渡あまね)

働き方改革はいまここから、一人でも始められる。業務改善士・沢渡あまねさんの「『自分』の生産性をあげる働き方」は、そのためのガイドになる。労働生産性を上げるのは、単に労働を効率化するだけではない。自分らしく、豊かに、高度な人材になるための第…